別れさせ屋に依頼をした私の結末
並木へのメッセージでは、私のことを“あの子”と呼んでいた。

小さなことだけど、そんなところにも意外さを感じてしまった。

私が見ていたのは、キングという人物を演じていた彼だったのではないかと思ってしまう。

これまでも、優しさが垣間見えたこともあったけれど……。

“……っ、水城!”

肩を掴んで引き止めてきたときが、本当の姿なのかもしれない。

「連絡しても迷惑がられるのが目に見えてるから、そういうのはしないけど……。でも、見せてくれてありがと」

私のことを思ってああ言ったのだとわかって、やっぱり好きだなと思ってしまった。

行き場をなくしていたキングへの恋心が、またふくらみ始めている。

だけど、この気持ちはなくさなきゃいけないのだろう。彼は、私がこの感情を抱くことを望んでいないのだから。

「んー。今は無理でもさ、時間が経てば……何とかなるかもしれないよ?」

「……時間、か」

恋愛の関係だったら、そういう展開も起きるのかもしれない。

でも、キングと私は違う。別れさせ屋とただの依頼主なのだから、これ以上の接点が生まれることはないだろう。

希望を持たせようとする言葉にはうなずいているけれど、可能性の低さに苦笑いを浮かべてしまう。

すると、並木は、

「ほら、俺に連絡してきたみたいにさ、協力してくれって言ってくるかもじゃん!」

と元気よく言いながら、私の肩をポンポンッと軽く叩き、ニカッと歯を見せて笑った。
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