別れさせ屋に依頼をした私の結末
「勝てる気しねぇわ」

苦笑いを浮かべるキングの声を聞きながら、じっと眺めた5枚のジョーカー。

「……どういうこと?」

たずねると、彼は手元の数十枚を、裏にしてテーブルに広げた。

「これ、依頼を断るために作ったトランプなんだよ」

「……“断るため”?」

「そう。怪しまれたら見せるために、普通のカードを少しだけ混ぜてるけど」

言われて探すけれど、数字のカードなんて3、4枚しか入っていない。

他は全部、ジョーカーの絵柄ばかり。

「最初のババ抜き……。あの日、本当は断ろうと思ってた」

キングは初対面でのやり取りを振り返る。

「え……、待って。あのときのカードって……」

「今回と同じだよ。1枚追加するまでは、全部ジョーカーにしてた」

「ええっ!?」

「普通に面倒くさいじゃん。親友をターゲットにするような女、相手にすんのもダルいし」

まさかの言葉に唖然とする私。

キングはテーブルに身を乗り出し、私の手元にあったAのカードを手にすると、まじまじと見つめ、指先でパチンと弾いた。
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