別れさせ屋に依頼をした私の結末
✳︎✴︎ 番外編 ✴︎✳︎
Side 01 ♤ マツヤマミナ ①
──昨年のクリスマス。
最後に乗った観覧車のゴンドラの中、大樹(たいき)は園内のど真ん中にある大きなツリーを同じ目線から観るふりをして、私の隣に座った。
彼の口数が急に減ったことで、私もその瞬間を意識し始める。
ひとつ前のゴンドラがそこに到達したときから、ふたりとも、ガチガチに緊張していたと思う。
もう少し。……あと少し。と、心の中でつぶやきながら、気付かないふりをして話しかけていた私。
大樹は、正確な位置で唇を重ねてきた。
「驚かせてごめん」
不意打ちのつもりだったのだと思う。
「……びっくりした」
私も、キスを察していたことは言わなかった。
ゴンドラに設置されていたスピーカーから流れるオルゴール音は、外からの風の音にもみ消されていて。
憧れていたドラマのような甘い雰囲気ではなかったのだけれど……。
「美奈、付き合って?」
他の子を想っていそうな彼から、そう言われたことが、何よりも嬉しくて。
あの“てっぺん”にいたときが、この恋の、幸せのピークだった。