別れさせ屋に依頼をした私の結末
「岡垣(おかがき)くん、さっきまで保健室で寝てたんだって。午後の授業から体調が悪かったみたい」

しぶしぶ、ふたりのそばへ行くと、マチが大樹のことを教えてくる。

「さっき起きてさ。もう平気だから、今から部活に行くところ」

大樹はそう言って、私たちの教室から離れようとする。

「……そうなんだ」

さっき見た光景、ふた言三言話しているだけのようには思えない。

何の話をしていたのかはわからないけれど、マチは楽しそうにお腹をおさえて笑っていた。

大樹も身振り手振りで話を盛り上げているようだった。

……体調が悪かったんじゃないの? 部活にも出遅れてるんでしょ?

なのに、マチがいるから教室の前で足を止めて、長々と立ち話をしていたんだ?

でも、私が来たら、すぐに部活へ向かおうとするんだね。

「……」

大樹が楽しげにしていたことにイライラして、目を合わせず教室へ入った。

「行ってらっしゃい! 無理しないでねー!」

ここから離れる彼にマチは手を振っている。

その言葉を聞いた途端、腹を立てていた私は、自分がとった行動に嫌気をさす。

体調が悪かったと聞いたのに、私は心配する言葉をひとつもかけなかった。

それどころか、態度もすごく悪かったはずだ。

「……っ」

こういうところなのかも。マチにあって、私にはないものって。
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