別れさせ屋に依頼をした私の結末
マチは私の表情をじっと見つめた後、目をそらした。

「最近の美奈、ちょっと苦手。……これじゃ、岡垣くんが可哀想だよ」

「……マチ」

この状況で、彼女が口にしたのは大樹のこと。

苦手な男子との交流を嫌がるよりも先に、この子は真っ先に大樹の心配をする……。

何も言えなかった。

そんな私に呆れた表情をして、彼女はこの場から去っていく。


「……」

置いていかれた私は、一点を見つめたままぼう然と立ち尽くしていた。

「松山……」

寺尾が顔を覗き込んでくるけれど、マチから言われたことを考えると、目は合わせづらい。

「あ……、俺、戸締りして……鍵返してくるよ」

「ああ、悪ぃ」

私のカバンを取りに行って、教室の戸締りをする並木。

彼が職員室に行ってる間、寺尾とふたりでいたけれど、私たちはひと言も交わさなかった。


“遊びに行くこと岡垣くんは知ってるの?”

……知らないよ。言ってないから。

“これじゃ、岡垣くんが可哀想だよ”

そんなふうに考えたことなかった。

クラスの人気者と仲良くなれば、マチもクラスの子たちに馴染めるかも。そう思っていたから。
< 208 / 247 >

この作品をシェア

pagetop