別れさせ屋に依頼をした私の結末
「え、まだ誰かいたんだ……」

「もう行こ」

水道の蛇口を閉めてからの足音が遠くなる。

しんと静まった女子トイレの中。

便座のフタの座り心地の悪さに疲れた私は、個室を出て、自分もそこに立つ。

手を洗いながら思い出すのは、昨夜から送られているマチからのメッセージ。

【きついこと言ってごめん】

怒っていた彼女から、突然、謝られた。

どう返せばいいかわからず、返事できずにいたら、今朝、また連絡がきて。

【今日少し話したい】

今度は話し合いを求められた。

「……」

正直なところ、今はまだ話すのがこわい。

“最近の美奈、ちょっと苦手”

正しい彼女と、間違えている自分。次話せば、その違いがはっきりする気がして。

避けて、トイレに逃げ込んで。大樹にも、マチにも、真正面から向き合えない。

「……ブサイク」

鏡に映った自分が、醜く見える。

自業自得なのに。

真正面から向き合えないのは自分のせい。

ふたりの気持ちを無視して、沢山ウソをついてきたからだ。
< 217 / 247 >

この作品をシェア

pagetop