別れさせ屋に依頼をした私の結末
昼休みになって、屋上でぼんやり空を眺めていると、出入口の重いドアが、ギィッとさびついた音を立てて開いた。

「いた」

私を見つけて、そうつぶやくのは寺尾。

彼はすぐさまスマートフォンを出し、どこかに電話をし始める。

「いたよ、屋上。……そう、北館のほうな。……お前、今どこにいんの」

口ぶりからして、多分、相手は並木だ。

「……ブッ。なんでそんなとこまで行ってんだよ。……おう、待ってる」

話しながら私のそばまで来た寺尾は、電話を切ると、当たり前のように隣に腰を下ろした。

「並木のヤツ、西館のほう探すって言いながら、逆方向にあるゴミ捨て場にいるんだと」

クックッと喉を鳴らして笑う横顔に、私はたずねる。なんで、と。

「昨日、休憩で一緒にいるのはやめたいって言ったのに……」

文句を言うと、寺尾は大きなパンの袋を両手で開け、

「それ、こっちが“なんで?”なんだけど」

言った後、パクッと頬張り、売店の袋から紙パックの牛乳まで出して、この場でくつろぎ始めた。
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