別れさせ屋に依頼をした私の結末
「ぼっちにでもなるつもりかよ?」

呆れた顔で見つめられる。

言い返せなくてうつむくと、寺尾は足元に置いてある私のお弁当の袋をとって、食えと言わんばかりに持たせてきた。

「あ、水城のことは気にしなくてもいいぜ。教室を出る前、北村に頼んどいたから。水城のこと昼飯に誘ってやって、って」

「キタムーに?」

「ああ。めっちゃ聞かれたけど。“えっ、なんでなんで~、美奈ちゃんとケンカでもしたのかな~?”って」

「……」

寺尾は他人(ひと)のことをよく見てるんだな。

マチが話す女子なんて、私以外では数えるほどしかいないのに、それが誰なのかまでちゃんと把握してるなんて。

「“わかった! 任せてっ! 美奈ちゃんのことも心配だなぁ~”」

「……キタムーに怒られるよ?」

キタムーの声質が高いところと、ゆっくり話すところを真似したつもりなんだろうけれど、誇張(こちょう)しすぎてひどい有様。

「え、似てない?」

「全然似てないよ」

「“美奈ちゃんのことも心配だなぁ~”」

「もういいって」

やめさせると、寺尾はニッと笑いかけてくる。

「だから、松山は俺らと食おうぜ」

ポンッと頭に置かれた手。

陽気な笑顔を前にすると、これ以上同じことを言ったって通じないんだろうなと悟った。

「……うん」

まただ。毎回上手く言いくるめられ、結局、私は寺尾たちに甘えてしまうんだ。
< 219 / 247 >

この作品をシェア

pagetop