別れさせ屋に依頼をした私の結末
「そんなのに頼んなくても、未練なんてすぐになくなるよ」

あっけらかんとした言葉。

「……なくなんないよ」

簡単に言うなと心の中でつぶやきながら、ため息をつくと、

「なくなるって。次の彼氏作ればいいじゃん」

寺尾はどこまでも単純な言葉で言い返してくる。

「テキトーなこと言わないでよ。彼氏なんて、そんなすぐにできたりしないから」

言い合うことも面倒くさく感じて、そっぽを向くと、突然、手を伸ばされて。

「できるって。俺、ショートヘアの女とか、めっちゃ好みだし」

頬にかかっていた髪の、毛先を指ですくわれた。

「……え? “俺”って……」

寺尾の言葉にきょとんとしてしまう。

「あ、“俺”っていうか、“俺みたいな男はいっぱいいるよ”って意味の、“俺”……」

寺尾はパッと手を引いて、私が誤解しないよう言葉を付け足すが、

「や、マジで“俺”って意味の“俺”じゃなくて、“俺みたいな俺”の“俺”って意味だからっ」

「……ん? “俺みたいな俺”?」

「あ、違っ……。“俺みたいな男はいっぱいいるよ”って意味での“俺”? あ、でも、“俺みたいな”って言ってるけど……、別に“俺が”って意味じゃなくて……」

何度も何度も同じことを言い直される。

途中からは、寺尾自身も自分が何を言ってるのかわからなくなっているようで。
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