別れさせ屋に依頼をした私の結末
「……」
親友なのに別れさせ屋のターゲットにした。そのことに罪悪感はあるけれど、私はやっぱり──
「……もうすぐだから」
「ん?」
このままじゃダメだと思ってしまう。
「もうすぐ、元通りになるから!」
依頼したことは他言しないという約束を、別れさせ屋と交わした私。
言えないけれど、少しでも安心させたかった。
「……ん、何の話?」
「何でもない! こっちの話!」
きょとんとしている岡垣くんのそばを離れ、トイレへ向かおうとしたのだけれど、
「水城!」
岡垣くんに呼び止められた。
振り向くと、彼は私の真似をするかのように、拳を頭の後ろに添えた。
「ポニーテール似合ってる!」
ニカッと微笑んだ彼。
その瞬間、さっきとはまた違う小さな痛みが胸の内でうずいた。
「……ありがと!」
……もうすぐだ。もうすぐ元通りになる。
私は心の中でそうつぶやきながら、歩き出す。
トイレまでの道中で、教師に呼び止められて立ち話をしている相良くんを見かけた。
「じゃあ、このまま職員室に取りに来てくれるか?」
「……かりました」
何やら朝イチから頼み事をされている様子。
それにしても、小さな声。昨日話している時も、聞き取りづらかった。
でも、クラスが違うのに、
“水城さん”
そう声をかけてきた。
私の名前……知ってたんだな、この人。
猫背な彼を横目で見ながら、私は隣を通り過ぎた。