別れさせ屋に依頼をした私の結末
「マチだけには……言いたくない」

マチは大事な友だちだけど。

でも、大樹に恋をする私にとっては、ライバルでもあるから、言いたくない。

言葉を詰まらせていた私が、ふりしぼるようにそう言うと、マチはひと言「わかった」とだけ返してきた。

リュックを背負って、教室を出ていく彼女。いつもより速い足音で、怒っていることが読み取れる。

「……」

ひとり残された私は、机をじっと見つめ、下唇をきゅっと噛む。

サイテーだ、私。

マチから大樹を奪ったくせに、奪われる心配をするなんて。

「……もうやだ」

こんな自分、本当に嫌だ。

ずるくて、醜くて。

第三者の目で自分を見ても、思う。私って何も魅力がないなって。

マチはすごくいい子で、私とは正反対。

大樹も、きっと思ってる。選択を間違えたな、と。

「っ……」

彼の心境を想像した瞬間、一気に涙があふれた。

机に置いた自分の手が、荒くにじんでいく。

下まぶたで抑えきれなかった涙のつぶが、頬へと流れ落ちたとき、

「……松山」

突然、寺尾が教室に入ってきた。
< 230 / 247 >

この作品をシェア

pagetop