別れさせ屋に依頼をした私の結末
「……なんで」

もう帰ったものだと思っていたから戸惑うと、教室の入口で立ち止まっていた寺尾は、「あー」とつぶやきながら、そばへ寄ってくる。

「水城と話すって聞いてたし、気になって戻ってきた。……並木は彼女と約束があるから、そのまま帰ったけど……」

ここにいる理由を話しながら、まじまじと私の顔を見る彼。

その視線が、私の目より下に向いていたことに気づき、急いで涙を拭った。

「……水城、出てったけど」

寺尾は廊下へ目をやると、小さくため息をつく。

「話し合い、上手くいかなかった?」

「……」

聞かれても、私はうなずくこともできず、一点を見つめる。

しばらく沈黙が続くと、寺尾は前の席に腰かけて、立ったままの私を見上げてきた。

「俺だったら、の話だけど」

ぽつりとつぶやかれ、私の目は彼に向く。

「俺だったら、もう正直に言っちまう」

唐突な話の振り方だけど、なんのことを指してるのかすぐにわかった。

「昨日、松山から1年のときの話を聞いたじゃん。俺……別に、松山を悪いとは思わねぇよ」

「……」

「水城が岡垣を好きでも、自分も好きなら好きでいていいと思うし。岡垣が水城のこと気になってても、選んだのは松山じゃん? 松山のこともいいなーって思ってたんじゃね?」

たんたんと話す寺尾。

なぜだか、寺尾が口にすると、自分が何も悪くなかったかのように思えてしまう。

だけど……。
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