別れさせ屋に依頼をした私の結末
「私、寺尾たちには感謝してるんだ。……今日、大樹と会うことにしたのも、寺尾の言葉に背中を押してもらったからだし」

これ以上は甘えられない。

本当に、振り回す形になってしまうから。

「……でも」

寺尾が待っていると思えば、大樹と向き合うことも少しは楽になるんだろう。

当たって砕けても、帰る場所があるのだから。

だけど、私は……。

「待たないでほしい」

これ以上、ずるい人間でいたくない。

「……大樹に全部話して、いちから、やり直したいの。だから……待たないで」

私の中には、大樹との恋を終わらせたくないという気持ちがある。

もう一度、やり直したいなら、他の人を待たせたりしちゃダメだ。

……マチなら、そんなことはしないはず。

「今まで、ありがと」

最後になる言葉を伝えても、寺尾は黙って私を見つめるだけ。

続けようと思えば、まだ続けられる。そんな雰囲気を感じながらも、私は意を決し、何も言わない寺尾に背を向けた。


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