別れさせ屋に依頼をした私の結末
早歩きで去った教室の前。
北館と西館を繋ぐ1階の渡り廊下につく頃、私の足は駆けだしていた。
息が切れても立ち止まらずにのぼった階段。
1分1秒でも早く、会わなきゃいけないと思った。
勢いよく開けた扉の音は、静かな室内に大きく響いたはずだ。
背の高い本棚が立ち並ぶ通路を、肩で息をしながら荒々しく歩いた。
けれど、読書スペースに着いて視界が明るくなっても、人が少なすぎるため、会いたい相手はここにいないのだと瞬時にわかってしまった。
貸し出しカウンターには2名の女子生徒。
放送で呼ばれたからだろう。彼女たちは書類を片手に、今からここを去ろうとしている。
私はこれからひとりぼっちになってしまうはずの、テーブルの席に腰かけていた男子生徒のそばへ行った。
「相良くん」
書籍をそばに置きつつも、タブレット端末を触っていた彼。
声をかけると、相良くんはゆっくり顔を上げる。
髪の毛で隠れた顔。目が合っているのかどうかもわからない。