別れさせ屋に依頼をした私の結末
外見にコンプレックスでもあるのだろうか。
風が吹いたとき、相良くんは前髪がなびかないよう、急いで髪を抑えていた。
相良くんの様子をうかがいながらも書類を取りに行こうとしたら、彼も席から立って手を伸ばし始めた。
距離的に向こうの方が近かったから、途中で身を引いたのだけれど――
「あれ」
相良くんの襟足に目が留まる。
髪の毛は黒一色だと思っていたのに、インナーカラーが入っている。
「染めてるんだね、内側」
「……っ!」
恥ずかしいのだろうか、髪のことを口にすると、相良くんは慌てて自分の髪の毛を掴んだ。
でもその手は耳の下に添えられていて、私が見ている襟足からは少し離れている。
「すみません! ありがとうございます!」
「……」
書類を回収しにきた図書委員たちに、静かに手渡す彼。
時間を気にした図書委員がそばを離れてから、私はもう一度、彼の髪に目を向けた。
「この間は全然気がつかなかった。内側だと目立たないんだね」
校則はゆるいほうだから、一度はそんな色にしてみたいと思っていても、派手な色は自分には似合わない気がして、毎回自然な茶色にしてしまう私。
インナーカラーなら、地味な自分でも似合うかもしれない。真似してみようかなぁ、と考えていた。
声をかけても彼はうんともすんとも言わず、耳の後ろに手を添えたまま。その様子が自信なさそうに見えてしまい、
「いい色だよ?」
隠さなくてもいいのに。そう思って微笑みかけた。
黒髪に映えた、透明感のある白色。
白というか、金と白の間って感じの色だな。それこそ、ちょうどさっき言っていたプラチナブロンドみたいな……。
色をまじまじと見ていた私は、ハッとする。