別れさせ屋に依頼をした私の結末
窓際のテーブルまで歩みを進め、リュックを置きながら壁かけ時計に目を向ける。
時刻は15時50分を過ぎたところ。
ホームルームが長引いて予定より来るのが遅くなってしまったけれど、室内を見回したところ、それらしき人は見当たらないので待たせてはいないはずだ。
スカートのポケットからスマートフォンを出して、SNSのアプリを開く。
「ココにDM(ダイレクトメッセージ)でクラスと名前を送れば、依頼できるんだって」と説明付きで拡散されていた、別れさせ屋のアカウント。
ユーザー名は「K(ケー)」。フォローとフォロワーの数はどちらも0名だった。
メッセージを送る前に見える範囲だけでも調べてみたところ、公の場で誰かとやり取りをした形跡はない。使われていないものに感じたが、送ってみると翌日にはちゃんと返信が届いた。
【初めまして、2年D組の水城さん。詳しい話は会ってうかがいます。明日の放課後、おひとりで西館3階の図書室までお越しください。 KING】
まさか、本当に返事がくるなんて……。
昨日は返信が届いてしまったことに戸惑い、突然会うことにもなってかなり動揺していた。
ここで待っていれば、そのうち別れさせ屋をしているという人が現れて、私は自分が抱える問題について話すことになるのだと思う。
言われた通りひとりで来たけれど、このまま依頼していいのかな。勢いで連絡してしまったけれど、そういうものを利用することには抵抗がある。
そもそも、学校でそんな商売をしているなんて、どんな人物なの?
届いたメッセージの最後には「KING(キング)」という名前。アカウントのユーザー名の「K」はこの名前の頭文字なのだろうか?
返信の文面からじゃ性別を判断しづらいが、キングは和訳すると王様だし、多分男の人なのだろう。