別れさせ屋に依頼をした私の結末
視界が涙でゆがんで、階段の段がはっきり見えない。

長い道のりで息が切れて、唾をのめばしょっぱくて。

その場所に着いたとき、私の頬は濡れていた。

「ごめ……」

急に来るなって言われていたことを思い出して、5メートルほど先の彼に近づけない。

「迷惑なの、わかってるんだけど……」

喋ると、涙はどんどん溢れ出して。

キングは静かに、階段のところで立ち尽す私を眺めている。

「他の、人に……会うんだよね?」

相良くんの姿じゃないんだから、きっとこれから別の依頼主と会う予定なのだろう。

わかっているのに……。

ここにいたら邪魔だってわかっているけれど……。

「……めん」

“マチだけには……言いたくない”

美奈から言われた言葉が、頭から離れない。

「っ、ごめんね……」

キングに頼りたい自分がいた。

この場所を離れることができなくて、謝り続けていると、キングは一歩、二歩と私に近づき、目の前にまできてくれた。
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