別れさせ屋に依頼をした私の結末
「マツヤマを大事に思ってるから、依頼したんだろ? オカガキを奪うことだってできるかもしれねーのに、そうはしたくないんだろ?」

ずるいところを見せたのに、キングの瞳の色は変わっていない。

今聞かれていることに関しては、ウソをついていなかった。うんとうなずくと、彼の手は私の頬から離れていく。

「だったら、俺は予定通り、このまま動く」

彼は息をついてからすっくと立ち、まだ座ったままの私に手を差し伸べてくる。

「水城も胸張って“親友”やっとけば?」

手を取って自分も立ち上がった私は、窓の向こうの北館へ目を向けた。

生徒がひとりも歩いていない、ガランとした廊下。教室の付近にも人影なんてなかった。

「……ありがと」

“水城は、相手が親友と思わなきゃ親友をやれないわけ?”

キングに聞かれたことで、美奈に対しての気持ちを見失わずに済んだ。

言われなきゃ、きっと、明日の私は学校へ来ることも嫌になっていただろう。

「あー、もうこんな時間だ。帰るぞ」

「うん」

お礼を言ったって、キングは聞こえていないふり。

でも、それを「聞いていないわけじゃない」と思えるようになったのは、優しい瞳を知れたからだ。
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