別れさせ屋に依頼をした私の結末
された瞬間を思い出して、不快に思っていると、キングはフッと笑みをこぼす。

「何が面白……」

笑われてムッとしたのだけれど、彼はそんな私の言葉をさえぎるように口を開いた。

「水城は、自分だけ無傷でいるつもりなの?」

口調は穏やか。でも、その表情はかたくて、

「別れさせ屋に依頼して、他人が持ってる縁を操作するってのに、自分はノーリスク?」

私を見る目は軽蔑しているようだった。

キスを報酬にする意図がわかってしまい、私の中の抵抗する気持ちは薄らぐ。

「……“依頼するのなら、自分も何かやりたくないことをしろ”ってこと?」

「そこまではっきりと嫌がられたら俺も傷つくんだけど……。ま、そういうことになるね」

つまり、依頼主も自分を犠牲にした対価を払えってことか……。

そんな風に言われてしまったら、もう断るなんてできないよ。

「わかった」

キングの言う通りだ。

関係のないキングを巻き込んで、親友が持つ人との縁を操作する。

そんな最低なことをするのに、自分だけが無傷でいていいわけがない。

しぶしぶ納得すると、彼は付け足すように囁いてきた。

「……口にはしない。それは約束する」と。
< 71 / 247 >

この作品をシェア

pagetop