別れさせ屋に依頼をした私の結末
でも、図書室なんかに行ったりすれば――

「ウソつけ。キスのことを考えて来れなかったくせに」

心の声を読んでいたかのようなタイミングで図星をつかれた。

「……考えてなんか。日直で忙しかっただけだし」

否定したけれど、本当はキングの言う通り、「行けばどうせキスをされるのだろう」と察し、行くのをやめていた。

なんでわかっちゃうんだろう。私ってわかりやすいタイプなのかな。

これ以上表情を読まれたくなくて、思わずうつむいた。

すると、彼は、

「……んとに」

と小声でつぶやき、靴箱の扉から手を離す。

そして、そのままこぶしを作って、こつんと軽く、ノックをするように、私のおでこを叩いた。

「水城って友だち少ねーんだろ? 余計なこと考えてないで、教室に居づらいときは来ればいいから」

面倒くさそうに、優しい言葉をかけられる。

距離が近いし、そんな言葉をかけられると、まっすぐ顔を見ることができない。

私はくずされた前髪を手ぐしで戻す。

「……しないなら、行く」

直視できないでいることが悟られてしまわないよう、しばらく、前髪を触る手で顔を隠していたのだけれど……。

「しないとは言ってない」

さらりと切り返されてしまう。

「っ、なら行かない!」

どうやら優しい時間は長く続かないらしい。
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