別れさせ屋に依頼をした私の結末
「何、また嫌がんの? 昨日わかったって言ったくせに」

「す……、するけど」

「じゃあ、今から今日の分な!」

「えっ、ここで!?」

こんな人通りの多いところでキスなんて。そう焦って顔を上げると、キングも人の目が気になるのか、校舎の遠くに目を向けていた。

「……場所を変えようよ」

「いや、ここで」

返事はちゃんと返すのだけれど、その目はずっと違う方を見ていて。

“今から”と言いながら、なかなかしてこないから、余計に緊張してしまう。

「するなら……は、早くしてよ。……人が来ちゃうし」

急かしても、彼は同じ方向を見つめたまま、うんともすんとも言わない。

様子がおかしい。そう思って、私も同じ方向を見ようとしたら、その瞬間――

「よし、今日は“どこ”にする?」

彼はそう言って、私の体の向きを強引に変えてくる。

見ようとしたほうを背にする状態で立たされ、同じ目線までかがんだ彼と向き合う態勢に。

「ど、どこにって……」

「決めていい? なら、今日は“ここ”」

いいかと聞きながらも、間髪入れずに左耳の前を人差し指で当てられた。
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