別れさせ屋に依頼をした私の結末
「そんなとこ……もっと普通のところにしてよ」
口にはしないという約束は守ってくれているけれど、耳のそばなんて恥ずかしい。
場所を変えてほしくて文句を言うが、彼は顔を近づけつつ囁いてくる。
「少し静かにしてて」
どうやら変えてはくれないようだ。
諦めた私は目をつぶり、そのときを待っていたのだけれど。
「……」
「……」
耳元に顔を近づけるだけで、なかなか口づけてこない。
「早くしてよ、人が……」
急かすと、キングは私の唇に人差し指を当ててくる。黙って、というかのように。
数秒そのままの態勢だった。
これはなんの時間なの? そう心の中でつぶやいたとき、彼の手が頭の後ろに回る。
続けて、耳のそばに唇を当てられた。その感触は、昨日の頬よりもはっきりしていて。
「っ……」
恥ずかしくて、私は閉じていた目にグッと力を込めた。
心臓がバクバクと激しい波を打つ。
彼の唇が離れても、熱くなる顔はすぐには冷めてくれなくて。
冷めないのは、キングの唇がまだ耳元にあるせいなのかもしれない。