別れさせ屋に依頼をした私の結末
「ふざけやがって……。アズミとはどうなったんだよ!?」

挑発されて、相手が感情的になったその瞬間――

「水城ってさ、足速いの?」

キングは声を荒らげている男を見つめたまま、小さな声で尋ねてきた。

「え、普通。……より、遅いかも」

「普通」と答えてすぐに、この後の展開を予測し、慌てて言い直す。

「遅い」と言えば、違う方法を考えてくれるんじゃないかと期待していたのだが、

「そっか。なら、頑張ってね」

彼はそう言い放ち、相手の隙をついて男たちに背を向ける。

そして、私の手首を掴み、有無も言わせず急に駆けだした。

「ええっ!?」

引っ張られた私は、やむを得ず同じように走ってはいるけれど、

「逃げるな、コラァ!」

話の最中で去られた男たちが、怒鳴りながら追いかけてくる。

「キング!! ダメだよ!! 追いつかれちゃうって!!」

相手との距離が5メートルもないところからの追いかけっこなんて、絶対に捕まってしまう。

早々に諦めている私だけど、どうやら、キングは逃げ切るつもりみたい。

「よそ見しながら走れるんだったら、余裕じゃん!」

そんな意地悪なことまで言って、全力で走らせようとしてくる。
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