別れさせ屋に依頼をした私の結末

Card 12 ♣︎ ヌリカエルオモイデ

「早く帰りな」

去ってく後ろ姿を見つめていた私は、居ても立っても居られず、後を追おうとする。けれど、一歩前へと足を踏み出したところで留まった。

“あの場で水城に何かされたら、ちゃんと守れないからさ。逃げた意味はあるよ”

守るためにと逃げてくれた彼。

意味があった行動を台無しにはできない。後を追えばきっと困らせてしまうはずだ。

だけど、言われた通りにこのまま帰るなんてできなくて、私は――



「3640円になります」

数分後、商店街の薬局に立ち寄っていた。

絆創膏や消毒液、傷薬の軟膏と、ガーゼに包帯……。傷の手当てなんてしたことがないけれど、思い当たる商品を全てかごに入れ、購入している。

【終わったらさっきの場所まで来れる? 待ってるから】

SNSのDMに送ったメッセージ。

既読がつかないけれど、きっと来てくれると信じて、ずっと待ち続けた。


1時間以上経って空も暗くなり始めた頃、

「帰れって言っただろ」

路地でうつむいていた私の耳に、彼の声が届く。
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