別れさせ屋に依頼をした私の結末
「そういえば、他校の人とは大丈夫だったの?」

スタッフに搭乗チケットを渡して乗り込む際、詳しく聞けていなかった話をすると、キングは向かいの席に腰かけて、窓の外を見る。

「大丈夫じゃない? こっちは弱みを握ってる状態だし、もう何も言ってこないでしょ」

“弱み”

その言葉で思い出したのは、路地で電話をしていたキングの姿。動画や画像を取り寄せていたみたいだけれど、一体誰に連絡をしていたのだろう。

無傷で戻ってこれるほど、相手にとって困るものを手に入れていたってことだよね……。

「これまでもそうやって別れさせてきたの?」

「まぁ、依頼のケースに寄るけど。そういう手段を使うときもあるね」

質問しておいてこう思うのはおかしいのだが、聞きたくなかった話だった。

私はまだキングのすべてを知らない。

誰も知らない情報を手に入れていて、怖いと思うときはある。

でも、泣いてしまったとき胸を貸してくれたり、優しく笑いかけてもらえていたから、私はこの人のことを「本当は良い人なんじゃ」と思っているところがあった。

人の弱みを握ったりするという一面は知りたくなかった。
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