別れさせ屋に依頼をした私の結末
鉄骨がきしむ音と共に、地上はどんどん離れていく。

視界が広がって駅の灯りが見えた頃、ずっと窓から下の様子を眺めていたキングが、こちら向きに座り直した。

「キスを見せたのは、見せる必要があったから」

なんで急にそんな話をするのかと思ったが、すぐにわかった。彼は約束を守ってくれているのだと。

“話は後で。……今、ピンチだから”

聞きたかった本人は、もうそのことを忘れかけていたのに。

「……。そうじゃなくて、なんで見せる必要があったのかを聞きたいの」

問いただしたいのに口元が緩む。

こういうところなんだよな、と心の中でつぶやいていた。

「それはまだ、言えない」

「“まだ”? じゃあ、いつかは聞かせてくれるの?」

「……全部終わったら言うよ」

「わかった。じゃあ、そのときまで待つね」

憎めない。

怖いと思ったばかりなのに、すぐ塗り替えられてしまう。

やっぱり“良い人なんじゃ”と思ってしまうんだ。

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