別れさせ屋に依頼をした私の結末
「……美奈が好きだったドラマでね、観覧車のてっぺんで主人公がキスをするシーンがあるんだけど。あの子、それに憧れているって話を、電話で岡垣くんにしていたみたいで。……岡垣くんは、それを叶えたの」

付き合うことにしたのと告げられたとき、美奈からその話を聞いた。

知らないところでふたりが距離を縮めていたことにショックを受けていた私は、何度も何度もその話をする美奈に苛立って――

“私たち、恋バナなんてしてこなかったよね~”

嫌味な言葉で、それ以上言えないようにした。

「私、最低なの。……“親友”だって言ったけど、その頃の美奈の恋バナ、一切聞こうとしてなかった。聞くどころか言いづらい空気まで作ってたんだよ」

自分だって岡垣くんを好きなこと話していなかったのに、言ってくれなかった彼女に腹を立てていた。

ロングヘアが好きだと話していた岡垣くんにも、ウソをつかれたような気持ちになって。わたしに言った言葉でもないのに。

「ほんと、嫌になる。……そりゃ、“マチだけには言いたくない”って言われるよね」

時間を戻せるのなら、あの瞬間に帰りたい。

やり直したい。幸せそうな美奈に「おめでとう」と言えなかった自分を。
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