別れさせ屋に依頼をした私の結末
「……何してるの?」

話す間、動く姿も視界に入っていたし、座っている側が傾いたことで、隣にきていることはわかっていたけれど、頭を撫でられて私の目はキングへと向く。

「泣きそうだったから」

「……泣かないよ」

思っていたよりも距離が近かった。

直視しないよう顔をそらすと、彼は頬に手を添えてくる。

「何をする気?」

顔をキングの方へと向けられて、思わず睨んだ。

それでも彼はためらいなく答える。キス、と。

「はぁ!? “キス”って今日はもうしたでしょ!」

「じゃあ、これは明日の分」

「“じゃあ”って、そんなのアリなの!?」

顔を近づけてくる彼の胸をグググっと押し返すけれど、その表情はまだ諦めていなくて。

「ホンット油断ならない! 離れてってば!」

「今日するのも明日するのも一緒じゃん」

「一緒じゃない! 今日は今日、明日は明日!」

押し返しても動じないキング。

立ち上がろうとしても動けないように体を抑えられ、車内はキーと音を響かせて揺れる。
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