クールな君の甘さを知れば

さっきはあんなに不機嫌極まりなかったくせに、今はそっぽ向いてるし。



もう、何が何だかわかんない。



ここまで意味不明ななるちゃんは見たことなくて、扱いに困ってしまう。



これは困ったな…。



口数が少ないなるちゃんでも、よほどのことがない限りはちゃんとお話してくれる。



こんなに気まずくなったのはいつぶりだろうか。



……早く元に戻ってよ、なるちゃん。



バカにしても、蔑んでくれてもいいからさ。



…いつもみたく、なるちゃんと笑いたいよ。



そう願っていたけれど、結局なるちゃんの機嫌が戻ることはなく、下駄箱を過ぎても校門から出てもずーっと黙ったまんま。



あともう少しで家に着いちゃうって時に、隣の動きがピタリと止まった。



「……海琴」



「は、はい」



な、なんだろう……?



突然呼ばれて固まる私。



なるちゃんの表情は、言わば“無”。



いつも以上に何を考えてるのかわかんない。



「…海琴の部屋で待ってて。すぐ行く」



「わ…かりました」



でも、そう言われたからには言う通りにするしかないよね。



怖がってたって仕方ないし…。
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