クールな君の甘さを知れば
「ど、どうぞー…」
少し小さめな声でそう言うと、遠慮がちに扉が開かれた。
そして、次の瞬間。
「ごめん」
光の速さで深く頭を下げたなるちゃん。
「…………え?」
その光景が理解できず、しばらく固まってしまう私。
それはそれは綺麗なお辞儀をかましたなるちゃんに、驚きを隠せない。
「本当に、ごめん」
なるちゃんが、謝罪会見並のお辞儀を私に向かってしてる……?
ようやくこの状況に頭が追いついて、なるちゃんにすぐさま駆け寄った。
「ちょっ…か、顔上げて…!!いらないからそういうの…!!」
私相手になにしてるの……!?
そりゃあたしかに、さっきは困ったけど…。
「別にぜんぜん怒ってないし、なるちゃんが謝る必要なんて微塵もないよ」
そこまで深刻そうにされたら、逆にこっちが悪いことをしてるみたいだ。
「………」
「ねぇ…ちゃんと聞いてる??」
…ここにきて、またいつものだんまり?
「私、謝ってもらいたいなんて思ってないよ。それより…なんで、いつもと違うのか話して欲しい」
「っ…」
未だにお辞儀をしたままのなるちゃんに、怒られる覚悟でぎゅっと抱きついた。