クールな君の甘さを知れば
「ただいまー」
って言っても、誰もいないけどね。
ようやく家に着き玄関に入ると、私の声だけが廊下に響いた。
お母さんもお父さんもまだまだ帰ってこない。
二人とも仕事が忙しいらしいから、帰ってくるのはだいたい深夜。
忙しいなら仕方ないよね、だってお仕事だもん。
「お邪魔します」
律儀ななるちゃんは、お母さんたちがいなくても必ず挨拶する。
なるちゃんって昔から真面目なの。
そういうところは……好き、なんだけど。
「…入らねぇの?」
「あ…入るよ…!ちょっとぼーっとしてた」
「……ふーん」
……変な間。
なるちゃんのことを考えてたってバレたくないから、咄嗟に嘘をついちゃった。
私の反応を変に思ったっぽいけど、気にしない。
「なるちゃんは先部に屋行っててー」
「ん、わかった」
なるちゃんの返事を背中で聞いて、リビングに行きジュースとお菓子を用意する。
それから階段を上ると。
「あれ、なるちゃん入ってなかったの?」
私の部屋の前でぽつんと待っているなるちゃん発見。