クールな君の甘さを知れば

その“なにか”の正体がわからない私には、穂乃果ちゃんがなんでこんなふうになっているのか全くもって理解不能。



だから、思い切って聞いてみることにした。



「…どしたの?今日、朝からちょっと変だよ?」



探るように下から覗き込むと。



「な、なんでもない!」



漫画だったら、バッ!と効果音が付きそうなくらいの勢いで口元を両手でおおった穂乃果ちゃん。



まるで、見ざる聞かざる言わざるのお猿さんみたい。



口から出そうになった言葉を、なんとしてでも言わないように抑えてるかのよう。



それで隠せてると思ってるのかな。



だとしたら、穂乃果ちゃんってかなり嘘がヘタ。



たぶんババ抜きとか苦手なタイプ。



たしかに、誰にだって言いたくないことの一つや二つあるよね。



でも……。



「…私には、言えないこと?」



ぽつり、小さくこぼす。



「……」



穂乃果ちゃんは無言のまま。



それはきっと、肯定を示している無言。



「…ごめんね。言いたいんだけど、それはちょっと違うっていうか…」



数秒の間が空いた後、言葉が紡がれた。



…これ以上聞いても仕方ない、よね。
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