クールな君の甘さを知れば
「そんなことないよ。だって、海琴ちゃんには“なるちゃん”がついてるでしょ?」
「そんな毎回のようには頼めな…って、顔がうるさいよ穂乃果ちゃん。ニヤニヤしないの!」
「えへへ、バレた?」
穂乃果ちゃんのニヤケ顔はもう見飽きたよ。
でも、楽しそうに笑う穂乃果ちゃんを見たら何も言えなくなっちゃう。
2人でそんな話をしながら下駄箱に到着…したところで。
「…おつかれ。課題、終わったか?」
壁に背中を預けていたなるちゃんがスマホから視線を上げてポケットにしまい、こちらに歩み寄ってきた。
「なるちゃん…!?なんで…帰ったんじゃなかったの」
なるちゃんには穂乃果ちゃんと勉強してから帰るというメッセージを送ったはず。
なのに、なんで待ってるの…?
そう聞こうとしたところで。
「ただでさえ学年が違くて会う時間少ないってのに、登下校までできなくなんのは普通に無理。海琴不足になるから」
甘さが、胸に染み渡る。
ぎゅっ、って心臓が押しつぶされそう。
不貞腐れてるなるちゃんの顔を直視できないくらい、目がオロオロ泳ぐ。