クールな君の甘さを知れば
「待っててくれてありがとう、なるちゃん。私、なるちゃんのそーゆーとこ好きだよ」
だから、今まで通り「好き」って思ったら伝えていきたい…って思った直後のこと。
「っわ?!」
薄暗い細道に引っ張られて、なるちゃんの腕の中へとすっぽり収まってしまった。
な、なにいきなり…!!?
「ちょっ、なるちゃんここ外───」
さすがに如何なものかと思って止めようとしたけど。
「……うな」
頭の上から、小さな呟きが落っこちた。
「…なる、ちゃん?」
なるちゃんの顔を見上げれば、りんごの如く真っ赤な顔をしていて。
「…そんな簡単に、好きとか言うなよ。勘違いするだろ、馬鹿」
ぶっきらぼうなのに、どこか甘さが滲んでいる低い声が耳元に落ちた。
「っ…!!」
耳まで赤く染まったなるちゃんの熱が、じわりじわりと私にまで伝染していく。
なるちゃんの、薄そうに見えて厚い胸板。
沈黙が流れる中、心臓の音だけが頭の中を支配する。
これがなるちゃんのなのか、それとも私のものなのかさえ分からない。
ただ分かるのは、今はなるちゃんのことしか考えられないということだけ。