クールな君の甘さを知れば
そんな光景を見ながらホットのカフェモカをすすった。
甘くて、ほろ苦い。
「お待たせ」
そこに、コーヒーと3種類のドーナツをトレーに乗せた長谷川くんが戻ってきた。
椅子を引いて、ふぅ…と一息つき腰掛ける。
「別に待ってないよ。随分悩んでたね?」
「こういうとこ来ると、あれもこれも食べたくなんない?」
「うん、なんとなくわかる」
「なんとなくかよ」
ははって笑うと、可愛らしいえくぼが見えるのは長谷川くんのチャームポイント。
本人はまだそれに気づいていないみたいだけど、クラスメイトの女子たちは長谷川くんの笑顔を見る度にキュンとしている。
自覚がないって、本当に怖いよね。
「珍しいな。日下部が俺を誘うの」
そう言ってオールドファッションを頬張った。
「そう?…でもたしかに、初めてかも」
私もお砂糖がまぶされたボンボローニをぱくり。
唇に伝わるこのジュワッと感と、ふわふわした生地の相性はなんともたまらない。
口に入れた途端バニラビーンズがふわっと香るカスタードクリームはまさに絶品。
「ふっ…うまそうに食うな」
「だって美味しいもん」
「それはそう」