クールな君の甘さを知れば
長谷川くんと寄り道して、2人きりでドーナツを食べている。
いつもとは違う空気感。
自分から誘ったくせに、なんだか腑に落ちない。
…ここにもう一人いたら、どうだっただろう。
長谷川くんはすぐに何を食べるか決めて、実は優柔不断なところを見せないように隠してたかな。
先に席を取っておいたり、あの子が好きそうなドーナツを選んで後で半分こにしたりしてたかな。
私はそれを微笑ましそうに見守りながら、のほほんとしている。
うん…我ながら解像度が高すぎるかも。
「…なに笑ってんの?」
「えっ…?私、笑ってた?」
1個目をペロリと食べ終わった長谷川くんが、コーヒーをすすって物珍しそうに私を見ている。
「めっちゃニヤニヤしてた」
「…うそ」
「ほんと」
「それは…やばいね。重症だ」
「重症?」
首を傾げる長谷川くんに、へへって笑う。
「私、長谷川くんと海琴ちゃんと…3人で過ごしてる時間が大好きみたい」
「っ、」
そんな私の言葉に、あからさまに顔色を変えた。
コーヒーカップを持つ手が止まる。
動揺────
特に反応を示したのはあの子の名前。