クールな君の甘さを知れば
「海琴ちゃんから聞いたんだって?九条先輩とのこと」
「………」
ごめんね、長谷川くん。
悪気があって言ったわけじゃないの。
意地悪でもなんでもない。
ただただ、思ったことがそのまま零れちゃっただけなんだ。
「…古賀から聞いたのか?」
「うん、そう」
「………」
黙り込む長谷川くんがもうひとつのドーナツを頬張った。
言葉を探しているのか、考え事をしながら咀嚼している。
「…びっくりした。展開早くね?って」
数秒の間が空いて帰ってきたものは、私が前にも思ったことで。
「ふふっ、私もそれ思った。この間まで告白を断ることに躊躇してたのにね」
「な。心配して損したわ」
あくまでも第三者目線。
ヒーローとヒロインを見ているだけの傍観者。
表舞台に立とうとしない…立とうとすることを諦めた人みたいに見えた。
長谷川くんは、それでいいの?
……なんて、私には言えないし、言う権利もない─────けど。
「…後悔、しない?」
少しだけ、お節介を焼いてもいいかな?
「諦めるの?海琴ちゃんのこと」
「…っ」
顔が、歪む。