逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
揺れる暖炉の火
「どうしたのでございますか、旦那様」
 侍女長が目を丸めた。

 馬上のア―ロンは見知らぬ娘を抱えるようにして帰宅したのだ。

「今晩この娘を預かる。その準備をしてくれ」

 娘の服は土で汚れていた。かすり傷も負っているようだ。
 侍女長が声をかけ屋敷が動きだした。

 ソフィーは応接間に通された。
「ゆっくりするといい、食事もすぐできるだろう」

「ありがとうございます。感謝の言葉もございません」
 声は掠れていた。しかし作法にのっとって礼をする。
 平民とは思えない仕草だ。

「いや、君を助けたのは俺じゃない。あの白い・・」
 言いさしてやめた、娘の顔が強張ったからだ。
 白い、あれが何なのかアーロンにも分からない。
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