逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 三度目に挑戦したとき最奥の床に違和感を覚えた。

 さりげなく置かれた板が動いたのだ。持ち上げてみる、すると小さな穴があった。
 空洞が下り坂のように続いていた。

 用心しながら辿ってみる。
 最下部に降りたとき人の影を見た。

 八人ほどの男がヴェンを凝視していた。
 とっさに腰の剣に手を当てた。

 だが彼らは立ち上がる気配がない。
 数秒にらみ合う。
 ふと、あのソフィーらの声が蘇った。

『それじゃ彼らにもこの薬を?』
『ええ。効いてくれるといいのだけれど』

 すると彼らも負傷兵なのか。

 そしてその服装に目を見張った。

 男らが着ているもの、それはラクレス隊ではなく、グリント―ルの国軍でもなくケイネ隊でもない。
 汚れてはいるがあれは明らかに、
「バッハス軍じゃないか、奴らは!」

 そう叫びそうになるのを必死にこらえた。


          * * * * *

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