逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
『絶対権限』の誕生
 衛兵がアーロンとシュテルツに告げた。
「陛下がおでましです」

 現れた王はハアハアとあえいで、
「例の件か。二人そろって熱心なことだな」
 まだ寒い季節だというのに汗がしたたり落ちている。

「王子とかけっこをしていてな。あいつは走るのも速いぞ、追いかけるのに苦労するんだからな」
 大きな腹を抱えてワハハと笑った。

「言いたいことはわかっておるぞ、バッハスのことであろう」
「そのことで今日は詳細に」
 アーロンが身を乗り出した。

「何をそんなに気負っているのだ。あの国とは同盟を結んでおる、不審な動きをするはずがないのだ」
「現実に衝突が起こっています。さらにダン・ラクレス殿の所在が分かっておりません。これは由々しき事態だと考えますが」

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