逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
アーロン邸
「まったく、お前の家は」
 シュテルツが息を切らして上がってくる。

「階段が多くて困るよ。ここまで来るのに息が切れてしまうではないか」
「何をじいさんのようなことを言っているのだ」
  かたやア―ロンの足取りは軽い。

「もうじいさんだよ。何をするのも億劫になって困っている」
「バカを言うな、まだ五十だろうが」
  笑って部屋へ案内した。
「まあ、あの国王の下でやっていたらそんな気にもなるがな」

  シュテルツも苦く笑ってから、
「体が勝手に年を取っている感じなんだ、これはちょっと堪らんな」
  じっと手を見た。そこに薄く老人斑が出ている。

「勝手にか、実感だな。そう、やっぱり若いときとは違うよな」
 アーロンがあっさり認めた。

「お前でもそう思うのか」

  どちらからともなく苦笑する。

 そんな声に、部屋の外で立ち止まった影があった。
 ワイトが聞き耳を立てていた。
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