逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 すると!

 そこに、若い男が映っていた。
 颯爽とした青年だ。それがびっくりしたようにこっちを見ている。

「いっ、いったい、どうなっているんだ?」
 驚くアーロンに、ワイトが大声で笑いかけた。

 そんな二人をシュテルツが見ていた。
 蒼白な顔をして声を失っている。

 アーロンは呆然として顔を、体を触った。
 鏡の青年も同じように触っている。鏡に近づくと青年も近づいて凝視している。

 そこに映っているのは昔の自分だった。
 三十前後の若いアーロン、彼は絶句してこっちを見ていた。
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