逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 シュテルツはしばらく考えていたが、
「それではアーロンと共に出廷することにしよう」
「はい。それでアーロン様はどちらに」

 さっきから姿が見えないのだ。 
「あいつは奥の部屋にいる。準備ができ次第出発するから君らは先に行っていてくれ」
「はあ」

 腑に落ちずシュテルツを見る。
 だが彼はこの国の宰相だ、眼光に押されて敬礼をした。

 
 庭でハインツ家の馬車が整えられている。

 執事らが見送りに出て、シュテルツが乗り込む。
 そのまま出発しようとする彼に首を傾げた。
 アーロンがいないのに、と。

 馬車が曲がり角に来たときフードを被った男が現れた。
 停止したそれにすばやく乗り込む。

 そして何事もなかったように王宮へ向かった。
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