逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 シュテルツは傍らフードをかぶった男を呼んだ。
 男がフードを取った。若い精悍な青年が現れた。

「彼はいったい」
「誰だと思う?」

 と場内を見渡していたが、
「アーロンの、息子だ」
「ええっ?」

「間違いなく彼の血を引く者だ。アーロンは急場においてこの男を差し出したのだ」

 場内は静まり、次に、
「宰相殿、ハインツ閣下は生涯独身でお子様はいらっしゃらないはずですが」

「よくあるだろう隠し子というやつだ。あいつはとある娘を囲っていてな。それで生まれたのがこのアーロン二世だ」
 青年が息をのむ。そしてシュテルツを睨んだ。
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