逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

　自邸に帰ったのは深夜になっていた。

　ア―ロンが門をくぐると、
「いらっしゃいませ。アーロン様のご子息でございますね」

　家人にはあらかじめシュテルツが手を回していた。
「お初にお目にかかります。どうぞ何でもお申し付けくださいませ、我らは誠心誠意お仕えいたしますので」

　執事や侍女長までがかしこまっている。

　自室に入って口をへの字に曲げた。
「なにが、お初にお目にかかりますだ。あいつらはもう何十年もの付き合いだぞ。なぜ俺が分らんのだ、まったく！」