逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
山での秘策
 洞窟に侍女が駆け込んでくる。

「お嬢様、ヴェンからの知らせです。至急相談したいことがあるそうです」
「至急? いったい何かしら」
「なんでも湖に関することだそうですが」

 その声が終わらないうちに一つの影が近づいて来た。
 ヴェンではない姿だ、とっさに身構えた。

「え?」

 ロウソクがその顔を照らし出した。
 
 若い青年が立っている。
 アーロンにそっくりな男だった。

「あなたは?」
「俺は・・いや、私は」

 青年はやわらかに笑い、
「アーロン様のご子息でいらっしゃいます」
 ヴェンが答えた。
< 139 / 466 >

この作品をシェア

pagetop