逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 二人の脇からデイズが覗き込んだ。
「あの大きさなら上から棒で動かそうとしても無理です。誰かが潜って流木にロープをかけるんだ。ただし流木があの角度で接触しているのなら細心の注意が必要だ」

「細心の、注意?」

「そうです。あの様子だと流木は一本じゃない。その下にも何本かあるはずだ。上の流木を動かそうとするでしょう? すると下の流木に何らかの力が加わる。すると流木がてんでに動いて桟にぶつかる。最悪桟が壊れるかも知れません」

「なんだと」

「だから潜って流木の絡み具合を見て、桟にぶつからないようにロープをかける必要があるんです」

 周囲がいっせいに保守兵を見た。

 彼は顔色を変えて、
「ぼ、僕は無理です。保守兵と言ってもまだ見習いで。そういう担当は先輩がやっていたんですが、今あの人は国境に駆り出されていて」
 国境警備の補充に行っていた。
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