逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 上から保守兵が鉈とロープを渡した。それを手に達者な動きで潜っていった。

 大木に絡んだ枝や他の流木がある。それを次々と切り離していく。
 合間に水面に上がって息継ぎをする、そしてまた水中に潜っていった。

 以前保守兵をやっていただけあって巧みな動きだった。

 邪魔な障害物を排除すると最後にロープを大木に巻き付けた。水上に出て待機していた兵に合図を送る。

 兵は声を合わせてロープを引っ張った。大木は徐々に上昇し水面に現れた。それを他の兵が回収する。

 先ほどの保守兵が堰の具合を確かめて、
「ああこれで大丈夫です、桟は動かせます」

 その言葉に全員が安堵の息をついた。


          * * * * *
< 154 / 477 >

この作品をシェア

pagetop