逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 嬰児(えいじ)は顔を真っ赤にして泣いている。
 ホギャーホギャーと甲高い声が響く。

 小さな体のどこにそんな力があるのか、はちきれんばかりの声だ。
 幼気(いたいけ)な子の声はかわいい。しかし反面なにかを突き付けられたような切羽詰まったものがある。
 狭い洞窟に反響してときに悲鳴のように聞こえてしまう。
 
 そんな時間が長く続いた。

 侍女が困惑して顔を見合わせ、負傷兵は途方に暮れたように寝返りを打った、そして背を向けた。

 するとそれを察したのか、ラナが泣き始めた。
 声を殺してつらそうに嗚咽している。

 ソフィーは目を据えて何かを考えていた。
 そして不意に立ち上がった。
 胸には生まれたばかりの嬰児を抱いている。

 皆が何事かと見上げた。
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