逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「つきましては」
 と副隊長のセルビィが、
「会議をして満場一致でガイが代理に決まりました。それでこれに領主印が必要なのです」
 と懐から書類を出した。

 国境警備について規約を記した紙に捺印する所がある。

「じゃ屋敷に帰りましょう。領主印はあそこにあるから」
 と言うと小走りに洞窟の外へ出る。

 ガイとセルビィがそれに続き、
「屋敷に帰るんだって?」
 ア―ロンも後を追った。

「だったら俺の馬の前に乗るか。歩いて行けば日が暮れるだろう」

 ガイやセルビィの馬に相乗りなどさせられるか、とは胸の中に納めておいた。

 ソフィーは振り返ると、
「いいえ。あ、そうですね、アーロン様の部下の馬を貸していただければ」
 さらりと言った。
< 163 / 466 >

この作品をシェア

pagetop